人生の続きを聖女として始めます
この問いに、夢見心地だった私の脳は完全に現実に戻ってきた。

「いえ、妃にはなりたくありません」

何を聞いていたんだこの人!
そんなこと一言も言ってないのに、自意識過剰?も甚だしい。
レーヴェと一緒にいたいだけだって言ってるのに。
私のハッキリとした意思表示に、獅子王は不思議そうな表情を浮かべ、次に少し項垂れて、最後に元の意地悪な顔になった。

「そうか。まぁレーヴェも懐いていることだし、特別に許す」

「ありがとうございます」

「聖女……名前はジュリだな?」

「ええ。そうですが?」

「ジュリ……」

名前を呟いた横顔を見て、少し鼓動が早くなった。
だからその顔で、声で、名前を呼ばないでよ。

「存外楽しかったよ。また対戦しよう。今度は負けないけどな」

「……あっ、はい。いつでも受けてたちます!次も負けませんけどね!」

私達はまた顔を見合わせて笑った。
少し垣根がとれた2人の関係が、これからどうなるかは全くわからない。
でも、彼がレグルスの兄であるなら、私にとっては義兄でレーヴェには伯父だ。
何かしら繋がった縁があるなら、憎しみ合わずに仲良くできる方がいいに決まってる。
目の前で笑う獅子王を見て、私も更に目を細めた。
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