嫁入り契約~御曹司は新妻を独占したい~
「ああ、本当に俺のものになるわけじゃないんだ、ってね。なんだか腹の底から悔しくなって、だからあのとき抑えが効かなくなった……。ごめん……」


あのとき……。
初体験を未遂に終わった夜のこと思い出す。
急激に頬が熱くなってきて、薫さんの顔を直視できない。
何日経ってもまだ、昨日のことのように鮮やかに、思い出すもの……。

すると、俯く私の両手を掬い上げるように優しく取り、薫さんは私の顔を覗き込んだ。


「一華の、家族への思いにつけこんで、ごめん」


強引なのに真面目で、余裕っぽいのにどこか不器用で、すごく律儀な人だなって思った。
契約を口実にすれば、謝罪なんて必要ないのに……。


「い、いえ……」


私はそれだけ言って、首を振った。

さっきから、現実じゃないような信じられない言葉が続いて、胸に込み上げてくる熱い思いが汲めども尽きない。


「始まりが普通じゃなかったからどう攻めていいかわからなくて時間がかかったけど、」


比類のない美しい顔つきで薫さんは、真剣な声で続ける。


「契約結婚じゃなくて、もう一度、俺の本当の妻になることに同意してほしい」


……え?


「私、が……?」


契約妻じゃなくて、本当の妻に?


「……っで、でも……」


握り締める両手に、力が込められたのがわかった。
視線が交差し、私は躊躇する。
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