嫁入り契約~御曹司は新妻を独占したい~



ログハウスを出ると、辺りはもう暗くなっていた。
最後に空の片隅に残った薄紫にも暗幕が侵食し、星がぽつぽつと姿を現している。空気がよく澄んでいるからか、尖って本当に星の形のように見える。

今度はゆっくり自社農園を見学に来てね、と彩月さんに誘われ、私はたじろぎながら頷いた。


「ブーケも出来上がりを楽しみにしててね!」
「は、はい……ありがとうございます」


まだ本当に、現実のことだと思えない。
星空も、夢の中で見ているかのようにキラキラとまばゆい。

彩月さんに挨拶をして、駐車場に停められた車に向かって歩く。


「……あれ?」


てっきり運転席で長瀬さんが待っているのかと思い、一言お礼を伝えなければと思っていたのに、そこは空っぽだった。


「兄と一緒に戻ったんだろ。あのふたり、同級生だから」
「えっ!」


助手席にエスコートされながら、私は素っ頓狂な声を上げた。

同級生ってことは、普段は友達みたいに親しく接してたりするのかな?
なんだか全然想像がつかないんだけど……。


「まあ、腐れ縁みたいなものだ」
「そうなんですか……」


今日は色々と意外な事実が明らかになってる気がする。
シートベルトを締めると、車は緩やかに発進する。


「同級生って、学校のですか?」
「ああ、大学までずっとだよ」
「そうなんですか……じゃああのおふたりは同い年なんですね」
「……そうだね」
「なんだか意外です。長瀬さんって落ち着いてらっしゃるのでもっと年上かなって」
「……そう」
「あ! 長瀬さんが老けて見えるとか、そういう意味じゃないんですよ⁉︎ 全然お若いですけど、なんて言うか……」
「……」


ひとりで勝手に喋ってうるさかったのか、ハンドルを握る薫さんは押し黙った。
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