嫁入り契約~御曹司は新妻を独占したい~
紳士的で人目を引く外見に、すれ違う通行人の多くが、薫社長に注目している。頬を染め、振り返って確認してる若い子もいるほど。

薫社長の休日スタイルは、グレーのシャツに黒の細身のスラックスで、シンプルな装いなんだけどスタイルがいいからかすごくカッコいい思う。

対して私は一応着替えては来たけれど、白のニットにブルーのロングスカート。数少ないワードローブの中ではマシな方なんだけど……。
スタイルは特別よくないし髪型だっていつも決まってセミロング。

私たちは並んで歩いていて、本当の夫婦に見えるのかな……。

何度帰宅しても一向に慣れそうもない高級マンションに戻り、私はエプロンをして料理を始めた。
肉じゃがはお母さんが作ってるのをよく見ていたし、家族みんな大好きでしょっちゅう作ってるので、手際よく完成した。

あさりの炊き込みご飯。舞茸のお味噌汁、ひじきの煮物。それと、秋刀魚を焼いた。

ダイニングテーブルにそれらを盛り付けたお皿を並べ、薫社長が椅子に座ると途端に緊張してきた。


「いい匂い。料亭に来たみたいだ」


……ハードルが上がる。

私はこの素晴らしく機能的なキッチンで料理してみたいと興味本位で主張したつい数時間前の自分を恨みたくなった。


「いただきます」


薫社長は両手を合わせ、真向きに座る私の目を真っ直ぐに見て言った。


「は、はい……」


ごくり、と息を飲む。
薫社長がお箸を口元に運ぶ動作を食い入るように見つめる。


「うん、うまい!」


咀嚼して飲み込んで、またすぐ次に肉じゃがを口に運ぶ様子を見て、私はホッと胸を撫で下ろした。
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