嫁入り契約~御曹司は新妻を独占したい~
「本当ですか? お口に合って良かったです」
「料理はよくするの?」
「はい、母が忙しいので代わりに」
「そうか。うん、ご飯も美味しいし、正直、こんなに美味い肉じゃがなんて食べたことないよ」


嬉しくなって、私は自分で食べるのを忘れ、薫社長の気持ちの良い食べっぷりにしばし見惚れた。


「そのお芋、甘くて美味しいですよね。北海道の品種なんですけど、スーパーで見かけたときは必ず買ってて。豚汁に入れても美味しいんですよ。あとお醤油も、香山で聞いた美味しいお醤油で……て、すみません! お食事中にうるさいですよね」


ペラペラとひとり話し過ぎたと思い、私は口を結んで肉じゃがに箸を付ける。すると。


「いや全然。むしろ新鮮だよ。芋にも色々種類があるんだな」


ふうん、などと言いながら、薫社長はそのあとも私とのお喋りを 続けた。
お醤油のこととか、香山でのバイトの話とか、私みたいな庶民が食べたことない高級レストランのじゃがいものメニューのこととか。

主に料理についてだけど、結構話が盛り上がった。
大企業の御曹司と会話が弾むなんて思ってもいなかったから意外だった。

まあ、私に合わせてくれたのかもしれないけど……。


「ご馳走さまでした」


背筋をピンと伸ばし、長くて綺麗な指先を揃えて両手を合わせる所作に家柄が表れている。
立ち居振る舞いがとても綺麗で、いちいち魅入ってしまう。


「お、お粗末様でした」


私は再びキッチンに立ち、お茶を淹れた。


「あの、社長はさっき新鮮だって仰ってましたけど、ご家族でご一緒にお食事されることはないのですか?」


テーブルに湯気が上るカップを置き、あまり立ち入っちゃいけないと思いつつ、つい好奇心で私は聞いた。
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