嫁入り契約~御曹司は新妻を独占したい~
僅かに思案するような間があってから、薫社長は口を開いた。
「そうだな。君の好きにしてもらって構わないよ。その方が俺も助かるし」
「恐れ入ります、社長」
「社長じゃなくて、薫、だろ?」
上品に首を傾けた薫社長は、お辞儀をしかけた私に、にっとハンサムに頬を綻ばせる。
「それにもし負担じゃなければ、君の作った食事をもっと食べてみたいんだ」
不意打ちの甘いセリフと穏やかな表情に、ドキッとした。
「契約書を書き換えよう」
すぐに真面目な面差しに戻り、薫社長は低い声で言う。
「契約書にも記したが、入籍したら家族カードを渡すから買い物はご自由に。それまでは給与として渡す分から生活に必要な分と__……」
まるで社員に業務連絡するようだった。
薫社長の声が遠くで響いているように、くぐもって聞こえる。
実際そうだ。
これは契約で〝妻〟は私の業務なのだ。
さっきのときめくような鼓動は途端に止み、心に冷たい風が吹き込む。
親切にされても心置きなく馴染むようなことのないように、冷静であれと心が警告する。
社長のときの真面目な顔と、気を許したような素顔とのギャップに正直驚いているけど……。
それをときめいていると、錯覚してはダメだ。
「明日からのアメリカ出張から戻ったら茅部家に挨拶に伺うよ」
ぼんやりしていた私は〝茅部家〟という言葉をなんとか耳で拾った。
「そうだな。君の好きにしてもらって構わないよ。その方が俺も助かるし」
「恐れ入ります、社長」
「社長じゃなくて、薫、だろ?」
上品に首を傾けた薫社長は、お辞儀をしかけた私に、にっとハンサムに頬を綻ばせる。
「それにもし負担じゃなければ、君の作った食事をもっと食べてみたいんだ」
不意打ちの甘いセリフと穏やかな表情に、ドキッとした。
「契約書を書き換えよう」
すぐに真面目な面差しに戻り、薫社長は低い声で言う。
「契約書にも記したが、入籍したら家族カードを渡すから買い物はご自由に。それまでは給与として渡す分から生活に必要な分と__……」
まるで社員に業務連絡するようだった。
薫社長の声が遠くで響いているように、くぐもって聞こえる。
実際そうだ。
これは契約で〝妻〟は私の業務なのだ。
さっきのときめくような鼓動は途端に止み、心に冷たい風が吹き込む。
親切にされても心置きなく馴染むようなことのないように、冷静であれと心が警告する。
社長のときの真面目な顔と、気を許したような素顔とのギャップに正直驚いているけど……。
それをときめいていると、錯覚してはダメだ。
「明日からのアメリカ出張から戻ったら茅部家に挨拶に伺うよ」
ぼんやりしていた私は〝茅部家〟という言葉をなんとか耳で拾った。