嫁入り契約~御曹司は新妻を独占したい~
夕食は薫さんのお勧めのフレンチレストランに向かった。
石造りの素敵な建物に一歩足を踏み入れると、大きくて豪華なシャンデリアが輝いていて、その美しさに圧倒された。

個室に案内され、夢みたいに心が浮上してふわふわした。外国のお城に来たみたい。非現実すぎる空間だった。

ここは、こないだ私が肉じゃがを作ったときに会話に出たレストランで、そのあとの衝撃が強すぎてすっかり失念していたんだけど、トリュフソースがかかったローストポテトというものを私も食べてみたいと何気なく話したのを薫さんが覚えててくれていた。
そういうきめ細かい心遣いが、社長として周りから慕われるポイントなんだと思う。

高そうなスパークリングワインもすごく飲みやすくて美味しい。
トリュフなんて食べたことがないから、衝撃的でとっても美味しかった。

食事が終わり帰るとき、薫さんは私を助手席にエスコートしてから普通に運転席に周ってので、彼が飲んでいたのはノンアルコールだったことを知った。
私だけがふわふわと、浮かぶような不安定な足取りだった。

マンションに向かう車内は無言だった。
妙に空気が張り詰めていて、息苦しい。

実家に嘘の挨拶に行くという緊張度の高いミッションを終えたのだから、もっと肩の力を抜いてもいいと思うんだけど……。

そうもいかない。
むしろ実家に着いたときよりも、マンションに到着した今の方が心音が大きい。


『寝室の件も、出張から戻ったらにしよう』


この発言に対する緊張の方が、実家に挨拶に行くことより遥かに比重が大きいのだと気づいた。

部屋に着き、スーツのジャケットを脱ぎながら薫さんはスタスタと自室に向かう。
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