嫁入り契約~御曹司は新妻を独占したい~
「想像以上に広いお屋敷だ……」
昨夜は緊張であまり眠れなかった。
顔色が悪く、目の下に隈ができている。
「ひ、ひどい顔……」
鏡に映る自分があまりにも血色が悪く疲弊した顔をしていたので口紅を塗り直そうと思い、バッグから化粧ポーチを出した。
そして中から、櫻葉化粧品の口紅を取り出したとき。
「塗り直すならこっちの方がいいよ」
背後から声をかけられて、完全に気を抜いていた私はギクッと大げさに肩を揺らした。
「そっちのピンクも若々しくて可愛いんだけど、ぜひとも秋の新色も試してみてほしいな」
唐突に話しかけてきた相手は唖然とする私と鏡越しに愛想よく目を合わせ、ズカズカとそばにやってきたと思ったら、頼んでもいないのにどこからともなく取り出した口紅をこちらに差し出した。
「へ⁉︎ ちょ、ちょっと待っ」
「大丈夫大丈夫、俺を信じて?」
警戒心を抱かせる隙も与えずに、柔和な笑顔で優雅に小首を傾げる。
「君が今持ってる櫻葉化粧品のチェリーズっていうラインの新作。あ、ベージュのリップに合わせてチークは発色の良いオレンジにしてみようか」
困惑している私に対して勝手に話を進めると、自分が持ってる口紅をなんの迷いもなく塗り始めた。
「ちょっと口開けてね」
茶色くカールされた長めの髪の毛が、ふわりと目の前で揺れる。
至近距離で穏やかに細められる瞳もやや茶色がかっていて、肌は白く中性的なイケメンだ。
この人も、入社式でお目にかかったことがある。
一度見たらなかなか忘れられない端正な容姿は、弟の薫さんとはまた違った魅力がある。
櫻葉化粧品の櫻葉芳樹社長だ。
昨夜は緊張であまり眠れなかった。
顔色が悪く、目の下に隈ができている。
「ひ、ひどい顔……」
鏡に映る自分があまりにも血色が悪く疲弊した顔をしていたので口紅を塗り直そうと思い、バッグから化粧ポーチを出した。
そして中から、櫻葉化粧品の口紅を取り出したとき。
「塗り直すならこっちの方がいいよ」
背後から声をかけられて、完全に気を抜いていた私はギクッと大げさに肩を揺らした。
「そっちのピンクも若々しくて可愛いんだけど、ぜひとも秋の新色も試してみてほしいな」
唐突に話しかけてきた相手は唖然とする私と鏡越しに愛想よく目を合わせ、ズカズカとそばにやってきたと思ったら、頼んでもいないのにどこからともなく取り出した口紅をこちらに差し出した。
「へ⁉︎ ちょ、ちょっと待っ」
「大丈夫大丈夫、俺を信じて?」
警戒心を抱かせる隙も与えずに、柔和な笑顔で優雅に小首を傾げる。
「君が今持ってる櫻葉化粧品のチェリーズっていうラインの新作。あ、ベージュのリップに合わせてチークは発色の良いオレンジにしてみようか」
困惑している私に対して勝手に話を進めると、自分が持ってる口紅をなんの迷いもなく塗り始めた。
「ちょっと口開けてね」
茶色くカールされた長めの髪の毛が、ふわりと目の前で揺れる。
至近距離で穏やかに細められる瞳もやや茶色がかっていて、肌は白く中性的なイケメンだ。
この人も、入社式でお目にかかったことがある。
一度見たらなかなか忘れられない端正な容姿は、弟の薫さんとはまた違った魅力がある。
櫻葉化粧品の櫻葉芳樹社長だ。