嫁入り契約~御曹司は新妻を独占したい~
それで……え、っと。

どうして私が、なにがどうなって芳樹社長にメイクされてるんだっけ……⁉︎


「あの、ちょ、ちょっと……!」
「あ、ほら喋んないで。ずれるでしょう」


注意され、私は仕方なく閉口する。

ここは芳樹社長のご実家でもあるんだから、居るのは当然なんだけど。
洗面所で初対面の女子にいきなりメイクの手ほどきを始めちゃうキャラだとは思わなかった。

強引なところは兄弟ですごくよく似ている。

……っていうか、自社製品の新作とか、常に持ち歩いているのだろうか?


「うん、いい感じ。君、思った通り化粧映えするね。普段はメイク落とすと赤ちゃんみたいな肌なんじゃない?」
「、へ? あ、赤ちゃん?」


真正面から目を真っ直ぐに覗き込まれ、こそばゆい感じがする。


「ま、今日のお召し物がちょっと地味なので大人っぽくしてみたけど、本来君は色の白さを際立たせるメイクの方が似合うかもね」
「は、はあ……」


美容部員みたいだな、と思って私は曖昧に相槌をする。

タダで社長さんに直々にメイクしてもらえるなんて、得したかも……なんて現金なことを考えていると。


「なにしてるんですか?」


廊下から薫さんの声が響いた。


「別に?」


などとうそぶく芳樹社長に代わり私はさっと前に出て説明する。


「あの、今ここで櫻葉化粧品の秋の新商品をご紹介していただいておりまして」
「新商品?」


眉間に皺を寄せ、薫さんは怪訝な表情を作った。
< 66 / 118 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop