嫁入り契約~御曹司は新妻を独占したい~
「お疲れ様。うまくやってくれて、ありがとう」


窓の外からは西に傾きかけた陽射しの柔らかい光が降り注いでいて、その光に髪の毛を透かされた薫さんは、黄金に輝いているように見える。
すごく、絵になる光景だ。


「い、いえ……」


ごくりと紅茶を飲み込み、私は慌てて目をそらす。
気を抜くと、時間を忘れて見惚れてしまいそうだった。


「そのお茶、そんなに気に入ったならお代わりもらう?」


私が両手で持ったカップをなかなか離さないので、それくらい中身に執着していると勘違いしたのか(本当は紅潮する頬を隠すためなんだけど)、薫さんは鷹揚に微笑んだ。


「あ、いえ! まだあるので、大丈夫です。香りがすごくいいですね」
「これは、ベルガモットにローズ、バニラが交ざってるのかな」


紅茶が浸った表面に鼻先を近づけた薫さんが言った。


「え、そこまでわかるなんてすごいですね! 私は美味しいアールグレイだな、くらいしかわかりませんでした」
「今、ナチュライに変わる新しいアロマ柔軟剤の開発をしているんだ。フローラル系の香りを研究していてね。それで、鼻が利くようになって」
「新しいアロマ柔軟剤……楽しみですね」


カップをテーブルの上のソーサーに置き、私は立ち上がった。
窓の外に花壇が見えたからだ。今、コスモスが満開になっている。


「柔軟剤って、ほんのり香るとなんだか安心するんですよね」
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