嫁入り契約~御曹司は新妻を独占したい~
ピンクも白もとっても綺麗で、なかには珍しい八重咲きのコスモスもあった。


「懐かしい匂いとか、愛おしい匂いとか、そういうのが一緒になって同じ匂いがすると家族って感じがするし、実家に帰ったときの安心感に似てるんです」


新しい香りってどんな感じなんだろう。

目の前に広がるコスモスを眺め、楽しみな気持ちで胸を膨らませていると。


「可愛いこと言うね」


椅子の背もたれに深く体を預けて座っていた薫さんが、前傾の体勢になった。


「……え?」


あの夜から、可愛いというフレーズに敏感になっている私は、まるでスイッチがオンになったように急激に照れ臭くなり、慌てて薫さんに背を向けた。

どうせからかわれてるんだ、と心をなんとか平常心に戻そうとした、そのとき。


「__きゃ!」


焦りすぎて足元がもつれ、自分の左足に右足が躓くという大失態をやらかした私は、バランスを崩して体を斜めにした。

このままじゃ転ぶ……! と、半ば諦めかけたタイミングで、ふっと滑らかに体が浮いたように感じた。


「おっと。平気?」


カップをテーブルに置き、慌てる素振りなど微塵も見せずに私の腰を片手で支えた薫さんは、上目遣いでこちらを見上げる。


「ごご、ごめんなさいっ」
「ううん、好都合」


……好都合?

赤面しながら首を捻りたい思いでいっぱいの私から薫さんは一瞬だけ目を離し、応接室のドアの方を見据えた。

そして、平静を取り戻せずにいる私の体を易々と引き込むと、すとんと膝に座らせる。
まるで躓いてから、私が薫さんの膝に腰を下ろすまでの流れがダンスみたいに、流れるような動作だった。
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