嫁入り契約~御曹司は新妻を独占したい~
◯
外資系の高級ホテルは四方を緑に囲まれていて、ヨーロピアンなスタイルの館内に一歩足を踏み入れただけで、ここが都会だということを忘れてしまいそうだった。
クラシックな絨毯とインテリア、眩く光り輝くシャンデリアに呆然と目を奪われながら、私は支度をするために借りた一室に通された。
今日は、櫻葉グループ創業百周年記念パーティーの日。
「どの方にも必ず笑顔で対応してください」
櫻葉化粧品の美容部員にメイクを施され、先日薫さんと一緒に見に行って購入したピンクのドレスに袖を通した私は、長瀬さんに釘を刺されていた。
「茅部さんはとにかく、余計なことはせずに社長の隣で寄り添って立っていればよろしいので」
「は、はあ……」
「あ、それと、ベタベタしろとまでは申しませんが、アイコンタクトを取るだとか少しはフィアンセらしく振舞ってくださいね」
「……」
眼鏡の奥の瞳を糸のように目一杯細めた長瀬さんは、鏡越しにたじろぐ私に笑顔を向ける。
笑顔と言っても彼のそれには独特な圧があって、気圧された私は首をすくめるのだった。
ヘアスタイルは、ドレスに合わせてアップにしてもらった。
希望通りゴールドのネックレスも用意していただいたので、それがちゃんと見えるのが嬉しい。
プロの手で時間をかけてヘアメイクしてもらえば、自分ってこんなに変わるんだなぁ、と感慨深く思う。
「準備はできた?」
トントン、と控えめな音を立てて部屋がノックされ、私は腰を浮かせる。
「はい、できました」
長瀬さんの返事を合図にドアが開き、薫さんが顔を覗かせた。
外資系の高級ホテルは四方を緑に囲まれていて、ヨーロピアンなスタイルの館内に一歩足を踏み入れただけで、ここが都会だということを忘れてしまいそうだった。
クラシックな絨毯とインテリア、眩く光り輝くシャンデリアに呆然と目を奪われながら、私は支度をするために借りた一室に通された。
今日は、櫻葉グループ創業百周年記念パーティーの日。
「どの方にも必ず笑顔で対応してください」
櫻葉化粧品の美容部員にメイクを施され、先日薫さんと一緒に見に行って購入したピンクのドレスに袖を通した私は、長瀬さんに釘を刺されていた。
「茅部さんはとにかく、余計なことはせずに社長の隣で寄り添って立っていればよろしいので」
「は、はあ……」
「あ、それと、ベタベタしろとまでは申しませんが、アイコンタクトを取るだとか少しはフィアンセらしく振舞ってくださいね」
「……」
眼鏡の奥の瞳を糸のように目一杯細めた長瀬さんは、鏡越しにたじろぐ私に笑顔を向ける。
笑顔と言っても彼のそれには独特な圧があって、気圧された私は首をすくめるのだった。
ヘアスタイルは、ドレスに合わせてアップにしてもらった。
希望通りゴールドのネックレスも用意していただいたので、それがちゃんと見えるのが嬉しい。
プロの手で時間をかけてヘアメイクしてもらえば、自分ってこんなに変わるんだなぁ、と感慨深く思う。
「準備はできた?」
トントン、と控えめな音を立てて部屋がノックされ、私は腰を浮かせる。
「はい、できました」
長瀬さんの返事を合図にドアが開き、薫さんが顔を覗かせた。