嫁入り契約~御曹司は新妻を独占したい~
提案をきっぱりと一蹴した薫さんに、長瀬さんは、おや? という表情をした。
なにかを考えるような短い間があってから、いつもの仮面のような笑顔に戻る。


「……失礼いたしました」


粛々と頭を下げる長瀬さんに対し、薫さんは無言だった。

パーティーの開始時間が迫り、私たちは会場に移動する。
ロビーはすでに、多くの招待客で賑わっていた。

このホテルで一番広いバンケットルームは壁面が全てガラス張りになっていて、窓の外には噴水と森のような美しい緑に溢れた光景が広がっていた。
シャンデリアの輝きもとっても素敵だけれど、庭園から射し込む自然の陽光は柔らかく穏やかだった。


「素敵……」


私は息を飲む。

華やかで美しい、目に入るすべての光景を吸収したくて、私はゆったりとしたリズムで深呼吸した。


「この会場、気に入った?」


隣で薫さんが穏やかに微笑む。
まるで本物の王子様みたいに、神々しかった。


「はい、なんだか夢のようです」
「じゃあ俺らの結婚式も、ここにしよう」
「へ⁉︎」


悠長に言って、薫さんは戸惑う私の手を握った。

招待客はおよそ千人超。
社員や取引先のほかに、有名人も姿もちらほらあった。
会場の中央には薔薇が大木のように活けられていて、パーティーの楽しみである料理はどれもお洒落でとっても美味しそう。

パーティーが始まると、賑やかな雰囲気が一転し、周囲は厳かに暗転された。ステージにはプロジェクターがセッティングされ、櫻葉グループの商品がランダムに映し出される。

薫さんと芳樹社長の挨拶があり、招待客たちからの祝辞や祝電もあった。
これほど大勢の前で堂々と、挨拶する薫さんは本当に凄い。私だったら極度のプレッシャーで絶対に逃げ出している。大会社の社長になるべくしてなったんだ、と思った。
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