嫁入り契約~御曹司は新妻を独占したい~
「いや、無理しないで。甘いものでも食べてて」


ほら、とビュッフェ料理の方に体を向けられ、私が背中を向けた隙に薫さんは颯爽と招待客の中に紛れた。


「は、はぁ……」


ひとりぼっちで取り残され、ぽつんと立ち尽くす。
正直に言うとヒールが高くて足が痛いし、ずっと笑ってたから顔の筋肉がピクついている。
それに、事業の話をしたいのに私がいたら邪魔になることもあるだろうし。

ということでせっかくだからお言葉に甘えてスイーツでも頂こうかと、手を伸ばしたとき。


「一華ちゃん、だよね?」


肩をポンと叩かれ、私はスイーツを諦めて振り向いた。


「今日はメイク似合ってるね」


ウインクみたいに片目を細めたのは、さっきまで女の人に取り囲まれていた芳樹社長だった。


「……美容部員さんにメイクしていただきましたので」
「櫻葉化粧品の美容部員、みんな優秀だったでしょ?」


私は警戒しながら頷いた。
こないだ櫻葉邸で会ったときの薫さんに対する態度があまり友好的とは言えなかったので、つい身構えてしまう。


「芳樹社長! お久しぶり〜!」


露出度の高いセクシーな黒いドレスを着ている女性が、いきなり芳樹社長の腕に絡みついた。
日本人離れしたエキゾチックな顔立ちで、足なんて私の倍くらい長い。同じ女性としても見惚れてしまう美しい出で立ち。
櫻葉化粧品の広告に出演していたモデルさんだ。


「あちらで一緒に飲みません?」
「ああ、ごめん。今大事な子と話してるから」
「だ、大事な子⁉︎」


眼球が飛び出しそうなくらいギョッとした女性が甲高い声を上げる。
そのままギロリと睨まれた。見る者を圧するような目力だ。
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