私が王子の彼女役? (365枚のラブレター もう1つの恋)
トントン
「親父、俺だけど」
「エイトか、入りなさい」
親父の部屋に入ると
真正面にあるデスクで
親父は書類に目を通していた
「珍しいな、エイトが私の部屋にくるなんて」
「クララのことなんだけど」
「この世に戻してほしいと言われても
それはできないからな」
「なんでだよ!
俺の家庭教師をしていたころは
親父だってクララのことを
気に入っていたじゃないか」
「頑張り屋で
周りを笑顔にできる子だったからな
だが、代々守られてきた魔法界の掟なのだ
クララだからって、特別扱いはできん」
「親父頼むよ!この通り」
俺は深々と、親父に頭を下げた
人に頭を下げてまで頼みごとをするのは
生まれて初めてだ
「お前が舞という子に気があるのは知っている
でもわかっているな!
お前は魔法界を背負わなくてはいけない
お前の結婚相手は、カノン以外認めんからな」
「俺がカノンと真剣に付き合えば
クララを戻してくれるのか?」
「それならば、考えてやらんこともない」
「親父、俺に考える時間をくれ」
「わかった。
エイト!物事を選ぶときには
どちらが魔法界のためになるかで選びなさい
国王になるということは
そういうことだからな」
「……ああ」
俺はまた
自分の部屋に戻ってきた
自分の代で掟をやぶるなんてできん!
って言っていた親父が
クララが戻れることを考え直してもいいと言った
これはものすごい進歩だと思う
舞に言えば
飛び跳ねて喜びそうだ
でも
俺はその条件をどうしてものみたくない
舞のことが好きで好きでたまらなくて
忘れることなんてしたくない
それも
俺のことを好きと言ってくれた
お互い思っているのに
どうして引き裂かれてしまうんだろう
「エイト様!エイト様!」
「だから
ノックしてから入って来いって!」
新米執事のヤナギが
廊下をバタバタ走り
いつものようにノックもしないで
俺の部屋に入ってきた
「エイト様、見てください!
クララさんが戻ってきてほしいと
彼女が消えた日から毎朝欠かさず
言霊神社に通っている男の人がいるんです」
「俺にも見せろ!」
俺が人間界の様子を見ることができるのは
魔法界の入り口がある言霊神社だけ
ヤナギは、言霊神社に来ている
この男の過去の映像だけを切り取り
早送りで俺に見せてくれた
台風だろうが、雪が降っていようが
一日も欠かさず通い続けているという
その男は100段の石段を登り
拝殿につくと
細長い紙を奉納して
パンパンと手を合わせる
そして
神社の掃除を終えると
また100段の石段を下っていく
毎日これの繰り返しだ
きっとこの男が
クララと永遠の愛を誓うはずだった
歩(あゆむ)だろう
昔の俺なら
『一人の女のためにこんなことするなんてダセ~』
と思っていただろう
でも今は違う
舞がどうしようもないくらい好きで
会いたくて会いたくてしょうがない
きっと歩というこの男も
クララに会いたくてしょうがないんだろうな
「エイト様
この方のためにも
カノン様ときちんとお付き合いをして
クララさんが帰ってくるように
協力してさせあげたらどうですか?」
「そうだな……
ヤナギの言う通りだな……」
俺はどうせ
魔法界の掟に従い
カノンと結婚するしかない
それなら舞のためにも
この歩という男のためにも
クララが戻るために俺ができる全てのことを
してあげないといけないな
俺は決めた
カノンと真剣に付き合うと
そして親父に
クララをこの世戻してもらおう
舞のためにも……
俺は勉強机の前に座ると
魔法界の地図を広げた
そして次の日から
俺の自由にできる全ての時間を使って
魔法界を周り始めた