篠田くんの取扱説明書
カーディガンとタオルをぎゅっと握って、私も中庭をあとにした。
着替えようと思ってジャージを取りに教室に戻ると、
秋穂が心配そうに私に駆け寄ってきた。
「桃、どうしたの!?
制服びしょびしょじゃんか!!」
「…あはは、突然のゲリラ豪雨?」
「嘘!
一瞬も雨降ってなかったから!」
篠田くんの時と同じように言い訳したのに、
秋穂にはすぐに嘘ってバレてしまった。うん、まぁそりゃそうよね。
「上の階からバケツをひっくり返されて、中の水がバシャっと…」
「なにそれ!
嫌がらせじゃないの?先生に言おうか?」
正直に言っても、秋穂の怒りは治まっていない。
「いや、事故だと思うから。
私に気付いてなさそうだったし…」
「事故だとしても言うべきじゃない?」
「いいよいいよ。
大事にしたくないし」