篠田くんの取扱説明書
敵うわけないのに、『彼女』と張り合えるんじゃないかって勘違いしてしまう、その言動。
蜂谷くんと立花先輩以外とはあまり話したりしない人なのに
なんで、優しくしてくれるんだろう。
私だから?
もしそうだったら…自惚れるよ。
……勘違いしちゃうよ。
「髪も濡れたままじゃ冷えるだろ。
タオルも貸してやる」
昼休みなのになぜかカバンを持っていた篠田くんは、そのぺしゃんこのカバンの中からタオルを取り出した。
……そういえば篠田くん、午前中いなかったな。
今登校してきたのか…。
「久我、最近三つ編みやめてるから、
髪が服や肌に張り付いちまってるな」
「……」
「まぁ、俺がそっちのがいいって言ったんだからいいけど」
篠田くんは肌に張り付いた髪をすくい上げ、タオルで丁寧に拭いてくれる。