アナタと、キスと、銃声と。
玄関へと急ぐ。
もっと、もっと早く。
翔平ちゃんが行っちゃう。
翔平ちゃんが…居なくなっちゃう…っ。
「…翔平ちゃんっ…!」
仕事用の黒いスーツを着て、ジャケットに袖を通さず肩にかけて、靴を履いて、玄関を出ようとしていた翔平ちゃんが振り返る。
…間に合った。
そう思ったら涙が溢れ出す。
「翔平ちゃん…っ」
「お嬢、起こしてし」
「行かないで…!一緒に…居、て」
溢れ出す涙を制服の袖で拭く余裕なんてない。
今目の前にいる翔平ちゃんを、忘れないように覚えておかなきゃ。
じゃなきゃ…行っちゃう。
自分が声に出して伝えたことと、矛盾のことを頭の中で考える。
翔平ちゃん。
わたしにとってはアナタが全てで。
アナタに、全てを奪って欲しくて。