アナタと、キスと、銃声と。
微笑んで、私に背中を向けた。
ゾクリと背中が痛む。
真っ直ぐ私の目を見つめる虎。
元の肌が分からないほど、刺青で埋め尽くされている背中。
指先で虎を撫でる。
ぴくりと翔平ちゃんが動く。
「お嬢…?」
「綺麗だね」
怖いなんて思わなくなっていた。
翔平ちゃんの背中に、似合うほど綺麗な虎。
ずっと見ていたいけれど。
このままだと翔平ちゃんが風邪ひいちゃうし。
「拭くね」
「はい」
ところどころ、痛々しい痣や傷を見つける度にこの世界の厳しさを思い知る。
優しく、優しく。
わたしを小さい頃から守ってくれていた背中を、ウエットティッシュで拭いていく。
「前向いて」
「いえ、前は自分で出来ますので」
「いいから言うこと聞いて」
一つ、間を置いて。
諦めたように翔平ちゃんが私の方を向く。