真 実

私は、少しずつ一人で
歩けるようになってきた。

最初は、立ったり、座ったりの
リハビリから・・
次に、五歩・・
十歩、二十歩、三十歩と
歩行を慣らしていき・・・

今日は、先生と看護師さんと

部屋についているベランダに
連れ出してもらった。


びっくりした・・・

・・見渡す限り・・・
・・うみ・・うみ・・・海・・

‥‥‥すごく‥‥き‥れ‥‥い‥‥‥

先生から
「何か、頭に浮かびますか?」
と、訊かれて
私は、首をふり
「でも、すごくきれいですね。」
と、答えると
先生は、嬉しそうに
「そうか。そうか。」
と、言われたので
「先生、もう少し、ここにいても?」
「ああ、だが、体が冷える前には
中に入ろう。」
「はい、ありがとうございます。」

ずっと、部屋の中にいたから
外の空気は、とても新鮮だった。



勝手にベランダに出した事を
先生は、彼・東樹さんに
文句を言われたらしい。

看護師さんが、こっそり
教えてくれた。


それからは、シャワーを浴びたり
自分の事は、少しずつ自分でやった。

料理とかは、していない。
彼・東樹さんが
部屋と海岸の散歩しか
許さなかったから。

私は、身体を元に戻す事に
専念した。
先生からも、それで良いと
言われていた。

東樹さんは、食事を運んできて
少し長く部屋にいるようになった。

私のいる、ベッドに腰かけて
私の髪に触ったり
頭を撫でたり、手を触ったり
するようになった。

触られる度に、私の身体は
萎縮したり、ビクついたり
している・・・

彼は、その度に、寂しそうな顔を
するが・・
毎回、その行為を繰り返し行う

彼に触られそうになると
嫌悪感がする・・・
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