真 実

ここ数ヵ月
里の孫娘である弘美から
言い寄られている。

里に話すと里を困らせるので
話してはいないが・・・

里が帰ってから
いきなりマンションに訪ねてきて
「星樹様が気になりまして。
星樹様は、私にとても懐いてくれまして
私がいなくなると泣いたりしますので。」
と、言ったり
「忘れものをしまして」
と、言ったり
わざと倒れそうになり
俺に抱きついたり

毎回、直ぐに追い返している。

基本俺は人を信用していない
極身内だけ
椿、隼人、里だけだ。

第一、星樹は、弘美には
まったく懐いていない。
弘美が来ると俺の後ろに隠れるか
抱きついてくる。

それなのに
「もう、奥様は戻らないのでは?
私がきちんと星樹様を
お育て致します。
私は、春樹様をお慕いしております。」
と、言いだす。

まったく、
頭の構造は大丈夫なのかと思う。

里は、きちんとした女性だが
孫娘は、話しにならない

だが、警戒されるのも困るので
「明日から社用で不在にする
今回は星樹も連れていくが
戻ってきたら話がしたい。
だから、待っていて欲しい。」
と、伝えると
弘美は、パァと明るく輝きながら
頬を染めていた。

里には、
「出張で不在にする。
今回は、星樹も同行する。」
と、伝えると
「畏まりました。」
「その間、里も少しゆっくりしたら良い。」
と、言うと
「ありがとうございます。」
と、言って星樹の荷物の準備を
してくれた。

島にいく前日の夜に
星樹と椿のDVDを見ながら
「星樹、ママに会いたいか?」
「ママ? あう。」
「パパも早く会いたい。
だがな、ママは、病気なんだ。
だから、もしかしたら
パパの事も星樹の事も
わからないかもしれないんだ。
それでも、ママにあいたいか?」
「わから、ない?」
「ああ。」
「ママっ、あう!!」
「そうか、わかった。
ママは、きっと、良くなるから
パパと頑張ろうな。」
「うん!!」
椿、俺とお前の子は、
こんなに良い子だぞ
一日も早く記憶が戻るといいな。
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