若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)

***

「ブルゴーニュは小さな家族経営のドメーヌが多いのですが、この地区ではシャトーも多いのですよ」

「そうなんでね」
なるほど、と頷きながら羽原佳織は車窓を流れゆく美しいブドウ畑を見つめた。

聞いたところで理解しているわけではない。出発前に彼女のボスが『月井氏のシャトーは、ボルドーじゃなくてブルゴーニュなのか?』と呟いていたので、聞いてみただけである。実のところワインには疎く、知っているのは彼女の好きなシャルドネがブルゴーニュ地方原産であることくらいだ。

やがて視界が開けると、そこには中世の頃に建築されたであろう歴史を思わせる城のような屋敷が見えた。

母屋と思われるひときわ大きな建物。
ワインを作る工場やら貯蔵庫と思われる建築物もある。母屋の近くに並んでいるのはコテージか。

見惚れているうちに、ゆっくりとカーブを曲がり、車が静かに停車した。
「到着です」という運転手の声を聞きながら、佳織の口から思わず「すごい」と言葉が漏れた。
駐車場には、ひと目で高級車とわかる大きな車がずらりと並んでいる。

台数は十台くらいとそう多くはないが、日本の道路を、五ナンバーをつけて走っているような車は一台もない。どれもこれも何のためと聞きたくなるほど車幅は広く重厚でタイヤも大きかった。ついでに言えば毛筋ほどの傷も見逃さないほど車体はピカピカに磨かれている。

駐車場の隅の方では、談笑している運転手の姿も見えた。
皆顔見知りなのかもしれない。
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