若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
矢神は「まだ登場したばかりじゃないですか」と呆れたようにため息をつく。

「ほっといてください。あの子は本当にいい子なんですよ」
グスグスと鼻をすすりながらキッと睨むと、彼は困ったような笑みを浮かべた。

階段を下りてきた新郎新婦が向かった壇上には既に恰幅のいい男性がいる。司会のマリーが、彼はこのシャトーのブドウ園を任されいる責任者で神父役を務めると紹介をして、本人が茶目っ気たっぷりの楽しい挨拶をして、それから誓いの言葉へと式は進んでいった。

相変わらず感無量のまま、時折涙を拭い、ハンカチを握りしめて向葵を心配そうに見つめていた佳織は、息を呑んだ。

「それでは誓いのキスを」
マリーがそう言ったのである。

「なんですって!?」
「どうしました?」

「キスなんて聞いてないわ! ちょっと矢神さん、これはどういうこと」
「ちょっと、落ち着いてください羽原さん」

今にも立ち上がらんばかりの佳織を矢神が抑えたりとジタバタしている間に、新郎が新婦の顔を隠しているベールを上にあげた。

「あ、ひ、向葵ちゃん」

向葵は潤んだ瞳で、まっすぐに夕翔を見上げている。

「え?」

それは恋をしている瞳だった。
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