若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
「矢神さん、あ、あなたもしかして笑い上戸なんですか?」
「そんなことはないと思うんですけど、あなたが面白いので」

「そんなこと云われたのは初めてです!」

――この男、絶対に私のこと馬鹿にしている。

「ふざけてないで質問に答えてください」
「はいはい」

もったいぶったように、矢神はまたコーヒーカップに手を伸ばした。

プチッと、こめかみの血管が切れた気がしたが、佳織は堪えて視線を手元に落とした。
ダメよ、と自分に言い聞かせながらゆっくりと息を吐く。その動作は本で読んだ怒りの感情の回避方法のひとつだ。

――気が短いという欠点を克服すると誓ったんだもの。
こんな挑発にはのらないわ。

気持ちが少し落ち着いたところで、自分もコーヒーカップに手を伸ばそうとした時、矢神がようやく答えた。

「彼は見ての通りですよ。私には幸せそうに見えましたけどね。それ以上はなんとも。人の恋路に足を突っ込むような野暮なことはできませんし」

――は? 野暮なこと?
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