若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
よしっ、と気合をいれて緊張しながら近づくと、声をかける前に夕翔は顔を上げてにっこりと微笑んだ。

「お待たせ」
夕翔が立ち上がると同時に、どこからともなく現れたホテルマンが彼の手から新聞を受け取る。
「ありがとう」
小さく礼を言った夕翔は、向葵に向き直った。

「じゃ、行こうか」
「はい」

「綺麗だ。さあ、手をどうぞ」
向葵は胸を高鳴らせながら、夕翔の腕にそっと手をかける。

背の高い彼は見下ろすようにして微笑みかけた。
「高層階の夜景も、たまにならいいよね?」
「はい」

夕翔はクスクスと笑う。
「向葵はまだ『はい』しか言えないんだね」
「あ、ごめんなさい。なんだか緊張しちゃって」

「そっか、じゃあ今度は定食屋でも行ってみる?」
「ええ? そういうお店も行くんですか?」

「行くよ、もちろん。居酒屋もおでん屋も」
「ほんとに?」
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