若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
佳織は、はじめて会った時の向葵を脳裏に浮かべた。

月井夕翔から渡された身上書通り、向葵の第一印象は素朴で明るい学生だった。

弁護士としてはまだまだ半人前でもそれなりにキャリアを積んだアラフォー女子の目には、成人式を迎えたばかりの彼女はまだまだ子供に見えた。若さに溢れ初々しいだけの女の子。女性というよりは少年のようだった彼女。

あれからまだひと月も経っていない。
それが今は――。

俯く首筋から漂うほんのりとした色香。潤んだ瞳。艶めいた唇それは半月前には全くなかったものだ。

薄く化粧をしていることもあるだろうが、それだけではないだろう。
彼女は今まさに、美しい成熟した大人の女性になろうとしている。

――恋はこれほど人を変えるのね。
しみじみとそんなことを思った。
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