若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
服装も変わった。
奨学金を餌に呼び出した時の服装は、アルバイトの面接のようなシャツブラウスに紺のパンツという出で立ちだった。一週間前に会った時は、カットソーに膝丈のフレアスカート。今日はどうかといえば、薄い水色のリネンのワンピースを着て、夏らしいサンダルを履いている。

――それにしても。
彼女に会った一週間前のことを、佳織は思い出しながら考えた。

その時はまだ、月井夕翔は向葵にマンションを与えただけで、部屋には一度も来ていなかったはず。

「彼が来るようになったのは、いつから?」
「えっと、ああ、前回ここに来た日の次の日に夕食に誘われて、そのあとからです」

恥ずかしそうに頬を染める彼女にかける言葉が、他にあるはずもない。
「そう、それは良かった」
佳織は心からそう言った。

結婚して、たとえ帰りが遅くなっても夫が毎日家に帰ってくる。考えてみれば普通のことだ。
そこに疑問を感じるとすれば、それは歪んだ感情なんだろう。

もはや心配はこれまで。私の出る幕はもうない。胸の奥で疼く不穏の闇もただの思い過ごしなのだと、そう思った。

始まりはどうあれ、今は幸せな新婚カップル。
心から祝福をしてあげよう、と。
「良かった。本当に良かったわね、向葵ちゃん」
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