若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
それから少し話をして後。

「じゃあ、来週もここでいいかしら」
「はい。とっても美味しいですもんね」

カフェを出て、じゃあねと佳織は向葵を見送った。

なにげなく後ろ姿を見ていると、振り返った彼女はペコリと頭をさげる。そんな彼女に笑顔で手を振りながら、佳織は釈然としない気持ちを抱えていた。

『贅沢を覚えてしまう自分が怖いんです』
最後にポツリと向葵はそう言った。

彼に会う前の自分と、彼と高級なレストランで会っている時の自分は、あまりにも違う。だから彼に会わない時は、その中間でいることにしたのだと。

実際女性らしい服装になったとはいえ、彼女が身に着けているものは高価なものではなかった。

バッグは有名ブランドのものではないし、帽子もしかり。資産家に嫁いだ片鱗も見せない普通の服装だ。派手さでいえば、ブランド物を身に着けている佳織のほうがよほど派手だろう。

『もし、妻だとわかってしまった時に迷惑はかけられないし、でも、契約が切れたら前の生活に戻らなきゃいけないから、その中間』

ニッと笑顔をつくる彼女に一体なんと答えたらいいのか。佳織はゴクリと固唾をのみ、すぐにはなにも言えなかった。
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