若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)

――契約。
これまでも数々の仕事をするなかで、その二文字には苦しめたことは幾度となくあるが、こんなに切なく響いたことはない。

ただせめて彼女が不幸に落ちないようにと必死に考えて、至極真っ当なアドバイスを送ることしかできなかった。

『自分を磨くことは、この先の人生がどうなっても決して無駄にはならないわ。一流のものを見て感じておくことは大切なことよ。それに、そう、たとえば外国語を勉強してみるとか。世界は広がると思うわよ』

本当に言ってあげたかったことは違う。

契約のことなんてもう忘れていいのよ。二年経ってもこの先も変わらずにあなたたちは夫婦なのよと、そう言えたなら。

でも、これ以上無責任なことは言えない。ただ見守るしか……。

そんなことを考え込んでしまう佳織の足取りは重かった。
やれやれと大きなため息がでる。
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