若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
パリのブティック。

階段を降りてきた彼女は、見違えるほど綺麗になっていた。
でも、怯えているようにも見えた。

案の定、差し出した手に触れた指先はかすかに震えているし、そして氷のように冷たかった。

自分は大変なことをしてしまったのかと、その時になってようやく、これはまずいと気づいた。

どうかこの子が安心できるようにと、彼女の手を取って華奢な腰に腕を回し、今ならまだ間に合う。予約はしてあったので、ウエディングドレスやパーティドレスを買うことにはなるが、無駄になっても仕方がない。それよりも彼女の意思をもう一度確認しなければと思った。

今思えば、あの時は立て続けの出張で心身ともに極限まで疲労していたのである。
何もかもが面倒でいっそと思い立ったことが、希望の光のように見えたのかもしれない。彼女のことも、もう少し考えるべきだった。

リムジンの中でようやくふたりきりになり、ゆっくり話をしようとした。

彼女が落ち着くのを待って、リラックスした状態でこの状況をどう思っているのか確認する。戸籍が汚れてもその償いさえできれば間に合う――それなのに。
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