若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)

芝居がかったように大げさに手を広げると、口角を上に歪める。

「じゃあな、若ーーい奥さんによろしく」
すれ違いざまに夕翔の肩を軽く叩き、真行寺は通り過ぎて行った。

忌々しげに眉をひそめて真行寺を振り返ると、いつの間にいたのか、少しだけ離れた位置に矢神が立っていた。

「お疲れ。資料は間に合ったのか」
「はい。全て予定通りです。――真行寺さんですか。そういえば、常務はお知り合いだったのですね」

月井と彼とは仕事の付き合いはない。それでも経済界に影響を及ぼす人物のひとりとして彼の存在は、矢神も気にかけている。

「ああ、青扇の同級生だ」
「そうでしたか。しゅうこさん、というのは？」

「ん？」

「ああ、すみません。聞こえてしまったもので」

「真行寺の妻だよ。彼女も青扇の同級生だ――中学の頃までだが、一緒だった」