若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)

向葵の顔が見たいと思った。あの邪気のない明るい笑顔を見れば心も晴れるだろう。そう思いながらスマートホンを取り出して、早めに帰るとメッセージを送る。

返事はすぐに来た。
『了解です。ご飯を作って待っています』

フッと口元に笑みが浮かぶ。


「この報告書、随分と地元住民寄りの意見に感じるが？」
「ええ、担当の今井がすっかり同情しているようで」

「同情ね」
「すみません、言葉が足りませんでした。彼も計画には絶対の自信を持って進めているのですが、ただ、どうやら地元市町村の対応に問題があるようです。評判の悪い議員が絡んでいるようで、それに対する同情なのですが。そのあたりについて、対応を模索している最中です」

同情という言葉が、夕翔はあまり好きではない。

だから、向葵の生い立ちに同情を誘うところがあったとしても、それはまた別の話だと思っている。彼女を取り巻く環境が、幸不幸に直結するとは言えない。