若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
小学生の時に両親が離婚した。離婚前の張り詰めた空気は今でもよく覚えている。

母に付いていくことになって、二人きりの生活になると、働く母の背中を見ながら送った毎日。いつも疲れている母に心配かけないように勉強も真面目にやったし、家事も一生懸命手伝った。

でも、自分ではどうにもできないことがあった。
両親の離婚は止められなかったし、向葵の顔は父に似ている。

時々母がふと向葵の目から視線をそらす時、ごめんね、お母さんと心の中で謝った。
自分の顔を見ると、母は父を思い出して辛くなってしまうから。

高校生になって、母が好きな人ができたと言ったときは本当にうれしかった。
母が父の呪縛から完全に解き放たれるために自立を誓った。

世の中の不条理も理不尽さも、自分の力ではどうにもならないことがあるってわかっている。
辛いことは沢山あったけど、全て乗り越えてきた。

だからこの失恋だって、乗り越えられる。
――大丈夫、沢山の幸せをもらったんだもの。

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