若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)



  ***


「お待たせしました」

ロビーに出ると、所在なさげに矢神が立っている。

彼の存在も忘れて、タクシーの中で号泣してしまった佳織は、ホテルに到着すると化粧室に駆け込んで、化粧と気持ちの両方を落ち着けた。

「大丈夫ですか?」

「はい。すみません」

またしても醜態をさらしてしまった。
ブルゴーニュのシャトーで酔って絡んだことを思えば、今回は感動の涙だから許してねと、心の中であやまってみる。

「じゃ、行きましょう」
「はい」

それにしても予約が必要なレストランに来るとは、本当なら誰か別の女性とでも来る予定だったのだろうか? ぐんぐんと上に昇っていくエレベーターが向かうのは、もしかして噂の天空レストラン?

心の中で首を傾げいている佳織の目の前で、昇りきったエレベーターの扉が開く。

と、その時だ。
扉が開いた目の前で、バシッと平手打ちの音が響いた。

「え!?」

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