若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
叩いたのは女性。
叩かれたのは男性。

男性の脇では若い派手な女性が、「キャア」と声をあげた。

出るにでられないが出ないわけにもいかない。
矢神がとりあえずというふうに、手でエレベーターの扉を抑えた。

「あなた、いい加減にしないと離婚するわよ。この場ではっきりと言ってちょうだい。二度と浮気はしないか、今ここで離婚を決めるか。さあどっちなの」

見れば女性は離婚届を差し出している。

突きつけられている男性――。
「真行寺崇文?」
佳織は思わずつぶやいた。

となれば叩いたのは真行寺柊子なのか。

頬を赤く染めた真行寺崇文はフッと笑って、妻の手から離婚届を受け取ると、破いて自分のポケットにしまった。

「柊子、俺が愛しているのは、今までもこれからも、お前だけだ」

そう言って若い女を振り返り、「ごめんな、遊びは終わり」そう声をかけた。

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