若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
『そうですね。利害関係のない一般女性とか』

それからは、偶然だった。
言いながらふと視線を向けた車の外。交差点にあの子が立っていたのである。

深く考えたわけじゃない。

『以前話をした、私が作業員になって出入りしたM&Lセンターに、明るくて感じのいい子がいるという話。覚えていますか?』

軽い気持ちで言っただけだ。
『今交差点に立っています。あのウサギのTシャツを着た女の子。あの子とかどうですか?』と。

なのに、促されるまま彼女を見つめた彼は、考え込んだ。

『あの子とは縁があるのかあちこちで見かけましたが、誰が見ていなくても仕事は真面目だし、人懐っこいし、何より明るくてね、そこがいいんです。ですが――』

その時ふいに彼は『いいかもね』と言ったのである。

一旦は本気ですか?と聞こうとしたが、わざわざ聞くまでもない。その場限りの他愛のないやりとりだと思った。
普通に考えればありえない。
彼と彼女では住む世界も違うし、あまりにも接点がなさすぎる。

だから、『まぁ、学生ですし、まだまだ子供ですけどね』と、話を流した。

それがまさか、こんなことになるとは。
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