若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
悶々としながらそんなことを考えているうちに、区役所に到着した。

運転手を待たせ真っすぐに窓口に向かうと、矢神の迷いとは関係なく、提出した婚姻届は呆気ないほど簡単に受理された。

本当に受理されてしまうのか?という気持ちが提出した時の手に出ていたのだろう。なかなか用紙を離そうとしない彼に、窓口の女性は戸惑いの目を向けていた。

やっぱり止めますと言いたい気持ちに堪え、窓口から離れた矢神はすぐに立ち止まる。その場から、新郎となる上司に完了を伝えるメッセージを送る。

『婚姻届、受理されました』

その時になってもまだ半信半疑で、冗談だったのにという返事が来るのではないかと、微かな期待をしながら画面を見つめた。今なら、まだ間に合う。窓口から数メールしか離れていないのだから。

でもその気遣いは無用だったらしい。

『了解。お疲れさま』
すぐに返って来た事務的な返信を見つめ、矢神はふと思う。

彼にとってのこの結婚は、一体なんなのだろう――。
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