若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
いくら素敵な人でも、彼のことは何も知らない。
もしかしたらとんでもない癖があるのかもしれないし、お酒がはいれば大トラになる人なのかもしれない。

これが本当の結婚なら、相手の全てを知りたいと思うだろう。そうでなければ、こんなはずじゃなかったということの連続で、向葵の両親のように離婚してしまうことだってある。

でも、どうせ偽装結婚なのだ。
王子さまは、ずっと王子さまのままでいてほしい。

――彼といる時だけは、私もお姫さまになった気分でいよう。

だから、ちょっとだけ贅沢をしようと、向葵は思った。
誰のためでもなく、自分のために。

たとえば何かに失望することがあったとして、自分がそう思ってしまうのは仕方がないと思うけれど、相手に失望されるのは、やっぱり嫌だ。

できればちょっと見直してほしい。

お姫さまにほど遠いのはわかっているけれど、ほんの少しでも近づきたい。
お?意外と大人かも?とか、見た目と違って案外クールだな、とか。少しでいいから彼に驚いてほしい。

そう思いながら向かった先は、何でも揃う百貨店。
気の向くままインショップに入ってみることにした。
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