若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
最初に足を踏み入れたのは雑貨店。棚にはナチュラル志向のほんのりとかわいらしい雑貨が並んでいる。
ふと目にとまったのは、トラベルポーチ。黄色やオレンジ色。その同系色の大きな花びらが重なりその間から黒猫がひょっこりと顔を出している。

「うわっ、かーわいい」

うっかり漏れた声に、店員がにっこりと微笑んだ。
「こちら人気なんですよ。これが最後のひとつです」

「そうなんですか」
「ええ、夏休みですしね」

「なるほど」

うふふ、そうですね。実は私もお出かけなんですよ。夫がパリで待っているんですよと、胸の内で答え、ついニヤけてしまいそうになる頬を引き締めながら、向葵はうれしさを噛みしめてポーチを差し出した。

「これ、お願いします」
「お買い上げ、ありがとうございます」
< 75 / 314 >

この作品をシェア

pagetop