若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)

『私はシンデレラ』と心の中で呪文を唱えながら、向葵は魔女の魔法タイムが終わるのを待った。

化粧を落としたすっぴんの顔に――といっても元々ほぼすっぴんだけれど――青い瞳をした女性美容師が、コットンを手にペタペタと化粧水を染み込ませていく。

瞼を閉じてなされるがまま、美容師の柔らかい手の動きを感じるのはとても気持ち良かった。

一体どのくらい経ったのだろう。

気を抜き過ぎたのか、向葵はいつの間にか寝てしまっていたようで、ハッとして瞼を上げた時には、魔法タイムは終わっていた。

「大丈夫ですか？　お疲れですものね」

「あ、すみません」

「鏡をご覧になって。いかがですか？　とってもとってもお綺麗ですよ」

促されるまま鏡を見た向葵の口から思わず素っ頓狂な声がでた。

「うわっ」

ウィッグ？　短かった髪はまるで長い髪を後ろでまとめたようになっていて、ゆるいカーブを描きながら肩へと流れている。