若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
カチャとドアが開いて、夕翔が車の中に入ってくる。
ハッとしてまた心臓が跳ね上がる。

――がんばって、せめてお礼を言わなくちゃ。
「あの……、色々と、ありがとうございました」

向葵を振り返った夕翔は、フッと花が咲いたように笑った。

「疲れたでしょ? 大丈夫?」
「大丈夫です」

心の中では、全然ダメですと答えた。これでは心臓がいくつあっても足りそうもないと悲しくなってくる。
走り出したというのに、車内は嘘みたいに静かだ。
胸の鼓動が響いてしまうんじゃないかと、心配になってまた悲しくなる。

「寝てもいいんだよ。外からは見えないし」
「はい、でも大丈夫です」

「そっか、それなら少し話をしよう」
彼はそう言って座席の前に手を伸ばした。

棚になっているそこは、冷蔵庫になっているのか。中から取り出した瓶は冷えていたようで、汗をかいている。
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