若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)

彼は、することなすこと向葵を驚かせ、感動させる。
「炭酸水」
「ありがとう、ございます」

グラスに注いでくれたあと、手が濡れないようにとの心遣いだろう。濡れた瓶に自分のハンカチを巻いてから、瓶も向葵に渡した。

「そのフォルダー使ってね」
「はい」
そして、「敬語じゃなくていいよ。夕翔で」と笑う、何もかもが。

「とりあえず、そうだなぁ。なにか聞きたいことはある?」
彼はそう言いながら、自分の分の瓶を取り出した。
ハンカチは向葵の瓶に巻いてしまったのでどうするのか見ていると、なんのことはない。手が濡れることも気にせず、グラスも遣わず、ふたを開けるとそのまま口にした。
そんなところまで、向葵の理想そのままだ。

「――あの、月井さんは」
「夕翔でいいんだよ?」

「あ、夕翔さんは、好きな食べ物はなんですか? それと嫌いな食べ物は」

炭酸水が、胸の火照りを冷やしてくれたのかもしれない。緊張の時間が過ぎると、向葵はなんでもいいから、彼のことが知りたくなった。

たとえかりそめでもいい、彼に寄り添いたい。
夢中でそう思った。
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