愛さずにはいられない
「何から何までありがとうございます。」
奈央が仁を見る。
「俺こういうの計画するの好きだからさ。」
「仁は昔から何かを企画するのが好きで、楽しみの前には下調べしていろいろ準備してくれてたよね。」
「そうだったか？」
「そうだよ。おかしとか。トランプとか。肝試し企画した時もあったよね。」
「あぁ。あったな。」
懐かしさに微笑んだ奈央の表情が一瞬くもった。

その表情を仁は見逃さない。

過去の思い出の中には必ず絃がいる。
絃は楽しみの前にテンションが上がりすぎて当日熱を出すタイプだった。
だから仁はそんな絃を予測して安静に遊べるものをあらかじめ用意したり、体調が悪くても食べられるおやつを用意したりした。

言葉にしない奈央と仁。何となく絃のことを触れてはいけないようなそんな空気が二人にはまだある。
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