愛さずにはいられない
「絃、あの時の話を聞いて、俺は自分よりもお前が奈央の本当の幸せを願えてるって思ったんだ。自分の気持ちとか欲望じゃなくて、奈央の幸せを考えられる絃には俺の気持ちは勝てないって思った。」
そよそよと風が吹く。
仁は墓石に刻まれた絃の名前を指でなぞる。
「本当は・・・これを言ったら絃にぶん殴られそうだけどさ・・・死んだのが俺だったら・・・って考えたことがあったんだ。」
涙も流せないほど悲しみに暮れる奈央。
笑わなくなった両親。

それだけじゃない。
奈央と絃のユニット”YOU”を待っていたファン。

絃が亡くなってから流れた涙の分だけ、悲しみの分だけ仁は絃ではなく自分の命だったらと考えた。

奈央は今頃・・・
両親は・・・
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