愛さずにはいられない
「でも、俺は生きてる。だからこそお前の分も何ができるかって考えてきたつもりなんだ。」
仁はまっすぐに顔をあげる。

「絃、俺は生きてる。お前は死んで、俺は生きてる。」
そう言いながら仁は絃の笑顔が浮かんだ。

悲しそうな顔でも、怒っている顔でもない。
なぜか絃の笑顔が浮かぶ。

「前にも言ったよな。俺はお前の分も生きるって。生き抜くって。なぁ、絃。俺、奈央のことが好きだ。昔から好きだったんだ。絃じゃなく、俺が奈央を幸せにしたかった。気持ちを一度はあきらめようとしたけどできなかった。ほかの人を好きになろうってした。自分の気持ちをごまかそうとした。でもできなかった。・・・生きているときに本当のこと言わなくてごめんな。」
きっと言葉にはしていなくても絃がは自分の気持ちを知っていたとわかっている。でもちゃんと本心を絃に言えていなかったことを仁はずっと後悔していた。

絃・・・聞いてるか・・・?

「絃、俺奈央を愛してる。どうしようもなく愛してる。絃に負けないくらい奈央を愛してる。絶対に幸せにする。絃にはこの気持ち負けないからな」
そう言いながら仁の瞳からは涙が一筋伝う。
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