愛さずにはいられない
「蓮水さん、こちら倉品企画の渡瀬さん。春号の特集ページで屋外スタジオを作成するのに協力いただいたのよ。」
先輩からの橋渡しがあり奈央はすぐに自分の名刺を用意した。
「この度はお世話になりました。素晴らしいセットで私も感動しました。数あるページの中でもとても引きつけられました。」
奈央が話しかけると渡瀬は少しアルコールも効いており饒舌に話始めた。
「いやぁ~WOMANさんは若手にも恵まれていますね。モデルでも通用しそうなほどのスタイルやルックスの社員さんも多くて私もうれしいなぁ。今日の酒はおいしいです。」
渡瀬は大手企画会社の部長職に就いている。50代前半の男だ。営業には定評があり、会社からの信頼も大きかった。
「特に花を使用した演出は倉品企画さんは素晴らしいです。冬の寒い時期にあそこまで春の植物を集められたのはそれだけのルートをお持ちだからですか?」
「蓮水さんは目の付け所が違いますね。まさしく。我々は各地に温室を持っていましてね。さまざまな時期の撮影にいつでもお呼びいただけるように準備しているんです。かなりの予算を費やして管理していますが、それだけの価値があると我々は思っています。」
「目をひきつけられる植物の素晴らしさでした。ぜひ、今後もよろしくお願いいたします。」
「蓮水さん。名前、覚えましたよ。」
奈央は営業スマイルで渡瀬のグラスに新たなビールを注いだ。
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