愛さずにはいられない
奈央が絃の手書きの譜面を指でなぞる。

譜面の一番上には『愛さずにはいられない』と曲の題名が書かれていた。

ずっと自分の気持ちを隠してきた奈央。絃が自分をどう思っているか知るのが怖かった。

そんな絃がある日突然奈央を呼び出して渡そうとしていた譜面は奈央への愛をうたった初めてのラブソングの譜面だった。

『俺はさ、歌は歌わないんだ。奈央の曲しか書けない。だから、奈央が歌わなくなったら、俺は曲が作れなくなるな。』
ぶっきらぼうに絃が奈央に言った言葉を奈央は思い出す。

そんな絃が事故にあったときに大切に抱きしめていたカバンに入っていた譜面。

奈央は同じように譜面を自分の胸に抱きしめた。
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