愛さずにはいられない
奈央は毎年仕事を休む日がある。
4月。春の訪れや新しい出会いの季節。花々が色とりどりに咲くはじめ、生き物の命が生まれる。陽の光がまぶしく降り注ぐ、そんな時。

奈央は黒い服に身を包み、ある場所に向かっていた。
長い道のりを歩きたどり着いたのは、絃のお墓だった。

奈央は持ってきた絃が好きだったお菓子をお供えする。

そう、奈央が必ず仕事を休むのは絃が亡くなった日。命日だった。

「久しぶり。」
お墓を掃除して新しいお線香に火をつける。
伝えたい気持ちも、話したいこともたくさんある。いつも今日は何を話そうかと決めてくるのに、実際に冷たい墓石を目にすると何も話せなくなってしまう奈央。

ふと目が痛んで自分のカバンから目薬をだす。
絃に見られているような気がして立ち上がり目薬を差すと、陽のまぶしさに目がくらんで少しバランスを崩した。
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