愛さずにはいられない
『ドンッ』
「すみません」
誰かにぶつかり奈央が瞬きしながらなんとか相手の方を見ると、自分よりも背の高い男性だった。
その雰囲気に奈央はすぐに誰だかが分かる。
「仁？」
「・・・おう」
そこにいたのは仁だった。
バランスを崩した奈央の肩を支えて、いつものように優しいすべてを包み込むような目で奈央を見ている。
何となく気まずくて奈央はうつむいた。
そんな奈央の頭をポンと撫でてから仁は「俺も線香あげていい？」と奈央に聞く。
仁の言葉に奈央は自分の体を少しずらし仁が前に進めるようにした。
「ほら」
仁はいつものようにポケットから奈央にティッシュを出す。

奈央がここにいることを仁は知っていた。

「ありがとう」
仁から渡されたティッシュで目薬をふき取り奈央は一歩下がったところから仁を見つめていた。
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