愛さずにはいられない
「ごめんなさいね。男どもが。」
そう言いながら接客していた莉子がスタッフに声をかけて仁たちのもとへ来た。
「初めまして。倉科莉子です。こっちは倉科大悟。私たちは仁君がアシスタント時代にスタイリストだったいわゆる先輩美容師なの。聞いてた?」
莉子は話しやすそうな柔らかい雰囲気をかもし出している。
「さっき聞きました。結婚式でお世話になることも。いいんですか?」
奈央の言葉に大悟と莉子が微笑む。
「もちろん。かわいい後輩の結婚式ですもの。」
「こうして美容師を続けてくれている数少ない後輩だからな。俺たちも連絡をもらってうれしかったんです。」
大悟が奈央を見る。
「一度結婚式の前に肌の質や奈央さんの雰囲気を知りたくて、わがまま言っちゃてごめんなさい。わざわざ来ていただいて。」
「いいえ」
「俺もお二人には結婚式前に彼女を紹介したかったから。妻になる蓮水奈央です。」
妻・・・。その言葉にくすぐったくなる。
「かわいい。真っ赤。」
莉子が奈央に微笑みかけると仁も照れたように奈央を見た。
「まだ、なんかなれなくて。」
仁も照れる。
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